スーパーファミコン版限定だが、
「ドラゴンクエスト5」のソフトできせきのつるぎバグというバグ技がある。
これはどういうバグ技かというと、まず倒したはずの敵を再度ターゲットとして攻撃し、オーバーキルで倒してしまう事で、敵の数を示す白ウインドがバグって「-匹」という表示になる。
そうなった状態でモンスターが自分と同種の仲間を呼ぶと、グラフィックはそのモンスターと全く同じだが、名前が「きせきのつるぎ」という特殊な敵が現れるバグ技である。
倒したはずの敵を再度攻撃するためには、必中の攻撃を使う。
どくばりや聖水など必ずモンスターにダメージを与える攻撃が該当する。
このきせきのつるぎは味方一匹に強制的にドラゴナムを掛けたり、無意味なラナルータを唱えたりと奇怪な行動を行う。しかしMPが少ない為、すぐにエネルギー切れになりその後はMPが足りないのに呪文ばかり唱える無駄行動のモンスターとなる。
きせきのつるぎを召喚させる必須条件は、同種の仲間モンスターを呼ぶ敵に遭遇することだ。
その条件で最短で遭遇できるモンスターは、幼年時代の主人公が幼馴染の女の子のビアンカと一緒にお化け退治のために訪れることになるレヌール城に出現する、カパーラナーガだ。
大蛇が骨だけになったような外見のモンスターであり、頻繁に同種の仲間を呼ぶ。
きせきのつるぎはHPは高いが、経験値も雑魚キャラの中ではトップクラスに高い。
少年時代、きせきのつるぎの情報をどこからか入手した自分は、幼年時代での最速レベルアップを夢見て、聖水をしこたま買い込み、レヌール城のカパーラナーガと遭遇をした。
はたして、聖水による倒した後の再度の攻撃のヒットに成功し、敵の数の表示はバグり、カパーラナーガが仲間を呼んできせきのつるぎが現れた。
そのきせきのつるぎはドラゴナムでビアンカを強制的にドラゴンにし、その後はベギラゴン一発を唱えたが、何とか耐え、あとはラナルータ等の無駄魔法を連発したので、すぐにガス欠になった。
これで条件が整った。HPが高いとはいえ、あとは無駄行動しかしないので数十ポイントのダメージを地道に与え続ければ、倒すことが出来ると当時考えたのである。
敵の表示の数がバグっている状態では単体攻撃が出来ないので、主人公は全体攻撃のブーメランによって、きせきのつるぎに確か10から20くらいのダメージを毎ターン与えていった。
これを一時間ほどずっと繰り返すも一向に敵は死んでくれない。ドラゴンに変化したビアンカは激しい炎を毎ターン吐き続けるも、きせきのつるぎは炎系完全耐性であるため、火炎を吐く轟音の効果音だけが空しく響き渡る。
しびれを切らして、コントローラーのXボタンにモノを置き固定して一晩おく作戦を試みた。これで一夜明けた後には流石にきせきのつるぎは倒れており、膨大な経験値が入っているだろうと想定しつつ。
しかし、朝起きてテレビ画面を付けるも、きせきのつるぎは未だなお映し出されたままである。
失望に打ちひしがれ、深いため息をつきながらすぐさまリセットボタンを押した。
何故倒せなかったのだろう、やはりバグが関係しているのか、いくらHPが高いとはいえ一晩も置けばチリも積もればで数千以上のダメージを与えられるので、倒せている筈だと首をひねりっぱなしで、釈然としない気持ちで一杯だった。
そう、その当時は知らなかったのだ。
カパーラナーガは「自動回復」という隠し特性を持っており、一ターンごとに100ヒットポイント回復することを。
100ポイント以上のダメージを一ターンに与えないと、倒せるべくも無かった。
幼年時代の主人公は夜通しで、文字通り不死身の怪物と戦い続けることになったのである。