徒然なるままな雑記ブログ 

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「草枕」の出だしの名文

夏目漱石著「草枕」の出だしの一節は次のような文である。

 

山路を登りながら、こう考えた。

智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。

とかくに人の世は住みにくい。

 

この短い文章で、人間社会の人間関係や人付き合いの難しさを端的に、そして的確に表現している。

智に働けば角が立つ、は例えば会社で上層部に対して、会社内で行われている非効率的な古い慣行を改めようと、その廃止だったり簡素化を進言をしたとする。

その慣行は非効率的なので改めたほうが会社の業績にとってはプラスなのだが、昔からの取引会社とのしがらみや社長の好みもあって長らく変えられなかった。

知恵を働かせて、進言した者は本来褒められるべきなのに、却って余計なことを言った奴として上層部から目をつけられて、出世を妨げられる。知恵を働かせた結果、角が立ってしまい、不利益を被る。

こういうことはどの会社でもよくあることだろう。

 

情に棹させば流される、古い付き合いの知り合いがいて、その知り合いが経済的に困窮して、借金の申し出をされたとする、冷静に判断すれば貸した金は戻ってこないし本人の為にもならないので断るべきなのだが、相手がかわいそうだとか断るのが心理的に気まずいという理由でずるずる請われるがままに何回もお金を貸してやる。

そうして流されているうちに相手が夜逃げしてしまい、自分が借金取りにせまられる羽目になる。

そういったことも古くよりよく聞く話だ。

 

意地を通せば窮屈だ、人付き合いで、例えば一人飲みが好きで、お金も掛かるのが嫌なので、飲み会に誘われても絶対に断るという主義を貫こうとしたとする。

そうすれば、その人がどんなに優れて、能力があり、性格的に素晴らしくとも、「あいつは人づきあいが悪い。」と影口を叩かれて、肩身の狭い思いをすることは多く、付き合いで窮屈を感じるだろう。

 

これらのように人間関係や人付き合いというのは絶妙に空気を読んだり、あるいは自分を押し殺したり、時には非情になったり、あるいはその逆のふるまいを行ったり、と非常に精神的に疲弊や負担を強いられる所業だ。

これらのことは普通の人ならばだれしも一度は経験していることだろうし、共感することも多い文だろう。

 

夏目漱石は文学的表現による簡潔な名句で、見事に人々がぼんやりと感じている人間社会での人付き合いの悩みを書き表したのである。