フランシス・ベーコンの「種族のイドラ」 永遠の観念に対して人間は永遠にその真実に辿りつけない。
イギリスの哲学者、フランシス・ベーコンは人間には真実への道を迷わす4つのイドラが存在していると喝破した。
其の4つのイドラは大きく「種族のイドラ」、「洞窟のイドラ」、「市場のイドラ」、
「劇場のイドラ」に分けられる。
「洞窟のイドラ」は個々人の誤った先入観や色眼鏡によって判断をゆがめられること、
「市場のイドラ」は噂話やもっともらしい予言などに影響されてそれを信じてしまうこと、「劇場のイドラ」は大学の教授などの権威のある人の話を無条件に信じてしまうことだ。
これら3つのイドラは影響されてしまうにせよ、強い意志をもって気を付ければある程度は影響を逃れられる類のものだ。
しかし「種族のイドラ」だけはどうにもならない。
人間の認識能力の限界に関わることだからである。
「種族のイドラ」とは人間という種族固有の認識能力の限界によって、真実に辿り着けない状況等を指す。
そのようなものは様々あると思うが、その最たる観念は「永遠」という観念だと思う。
例えば宇宙はビッグバンから始まったという説がある。そしてビッグバンの前は無の状態だったという。しかし人はそれを聞いても無意識に、「じゃあその無の前には何があったんだ」とツッコミを入れたくなる。そしてその無の前に何かがあったとしてその「何か」の前には何があったのかと問いたくなる。その問いは初めに何を措定しようとも、永久に終わることなく、無限後退におちいる。
仮に始まりは「神」だった、神が全ての世界をおつくりになったと言われても、じゃあその神様の前には何があったんだと問いたくなる。
そのような因果の無限後退というものは人間にとってはそれがどんな状況なのか全く理解不能な状態である。
それが人間の種族の認識能力の限界だ。
そして永遠の謎は、外で見かけるありふれた蟻という虫の種族が永久にアインシュタインの相対性理論を理解できる日が来ることは無いのと同様に、人間に真実として理解できる日は来ないだろう。