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ケーペニックの大尉事件 人は外見や権威付けに弱い

”ケーペニックの大尉事件”という出来事がかつてドイツで起きた。

一介の靴職人、元詐欺師であったに過ぎない中年男性が、古着屋でいかめしい陸軍大尉の制服を購入し、それを着ることで自分を陸軍の実際の幹部に見せかけたのである。

そして街にたむろしていた陸軍の歩兵を引き連れて命令し、市庁舎に乗り込んで市長を逮捕し、マルクを奪った事件である。

ja.wikipedia.org

 

街の通行人も、ドイツ陸軍の隊員も、市庁舎の市長や職員も誰もこの中年男性が偽物であることを見抜けず、信じ切ったというところに大きなポイントがある。

その信じ切ってしまった理由は、この事件を引き起こした男が重厚な陸軍大尉の制服を着ており、外見に威厳があったからである。当時ドイツは軍隊が絶大な威光を保っており、特に軍の制服姿というのは、その権威の象徴でもあった。

 

その権威の象徴である制服を非常に上手く利用した事件であった。

 

人は立派なスーツであったり、あるいは職業の制服を着ている人間に対しては、何故か信用してしまう性質を持っている。詐欺師や泥棒でも立派なスーツを着ていれば有能なビジネスマンだと勘違いするし、白衣の立派な衣装を着ていれば本物の医者であると信用してしまうだろう。また警察の制服を着ていれば、本物の警察官だと信用するに違いない。

 

これには、時間や労力の効率化に大きく関係している集団心理である。確かにごくまれに外見の制服を悪用して騙す人間が居るかもしれない。しかし概ね外見の制服はそのまま職業やその人の能力を今までの経験上表していたので、そのまま信じることは時間や判断労力を大きく節約し、効率化してくれる。

これは外見だけではなく、海外の有名な大学の博士課程を卒業していたり、立派な資格を持っていたり、立派な功績や賞を取った人を有能で優れた人物だと判断する時も同じである。時には立派でない時もあるが、おおむね当たるので効率が良くなる。

有名なブランド企業の商品を購入するのも、そういった企業の商品であれば安全であろうというバイアスが働くからである。

 

それを更に推し進めて考えると、極端に言えばこの世界の物理法則だってそうである。太陽が毎日東から西に沈んだり、万有引力の法則であったり、といったあらゆる物理事象も結局は過去の偉大な物理学者が発見した法則であったり、日常の経験則を信じているに過ぎない。

明日急に太陽が法則通りに動かずに爆発したり、万有引力の法則が働かなくなる可能性も決してゼロではない。結局は物理法則というのも今までの経験則や事象から帰納されたものにすぎず、その絶対性が保証されているわけでもないからだ。

だが、生活を送るにあたってそんな天文学的に低い確率のことまで考慮に入れていられない。その法則が働くとして日常を過ごした方が遥かに効率が良いのである。

 

結局は、人が外見や権威付けに弱いのは確率的思考による時間や脳の判断労力の省力化による効率の賜物なのである。